遊笑楽宴
2年B組物語
問題一
新たな転校生
第一節 急な話
ここは何処かの星のどこかの国の何処かの町のとある住宅街にある一軒家。
この家に住む俺、串刺 元気太郎(15)は父さんの仕事の都合により昨日ある中学校に転校したんだけど――
串刺「・・・・は?」
串母「だから、明日転校することになったから」
串刺「いや、だって昨日転校したばっかりじゃん。何で急に・・・」
串母「今日ね、転校先の校長先生がいらっしゃって、何でも学費が無用らしいのよー」
串刺「学費が無用って・・・絶対怪しいよそれ。遊笑楽宴じゃあるまいし」
串母「あ、それよそれ!そこに転校するのよアンタ!」
串刺「・・・は?冗談はよそうぜ母さん」
遊笑楽宴といえば有名な学校で、個性豊かな生徒達を校長みずから呼び集め教育してるという・・・・。
校長は何でも有名企業の社長さんで、娘さんが大好きだった学校が廃校になることを聞いて買い取ったらしい。
その後リフォームを重ねピカピカの学校にし、学費無用の肩書きで生徒をスカウトしているらしいが・・・どうも嘘っぽい。
串母「冗談じゃないわよ、アンタ実の母親を疑ってー。バチが当たるわよ!」
串刺「いや意味ワカメだし・・・それに遊笑楽宴ってここから遠いじゃん」
串母「それなら大丈夫よ、近くにある林檎アパートって所の部屋借りたから」
串刺「・・・は?それって・・・」
串母「15で一人暮らしなんて、私の頃なら考えられないわね・・・アンタが羨ましいわ」
串刺「いやいや、家賃とか食事とか、それに引越しの手続きとかもあるしさ」
串母「家賃はこっちから仕送りするから安心しなさい。家事ぐらい男なんだからできるわよね。
引越しの荷物はもう届けたから、自分なりにコーディネートしなさい」
串刺「コーディネート・・・あ、せ、制服は!?まだっしょ!?それなら明日じゃなくて――」
串母「ああ、制服ならもう貰ったわよ。ついでに生徒手帳も」
串刺「・・・・・・」
どうやら俺に打つ手はないようだ。完敗だ。
この歳で母さんに負けるとは・・・・どうやら俺は母さんを甘く見ていたらしい。
串母「うふ、じゃあ仕度済ませたらお父さんの車で現場に急行よ!」
串刺「いや、色々違うし。てか父さん今仕事中だろ」
串母「あら、私を甘く見ないでちょうだい。久々にぶっ飛ばすわよー♪」
串刺「・・・・!!!」
母さんの運転は、前に一度だけ体験した事があるが・・・・。
スピード違反ギリギリでブンブン飛ばして壁スレスレの所でカーブ。
ちなみに幼稚園の頃だったが、俺はあの時あまりの恐怖にちびってしまった。
この歳でちびりたくない。もしちびったら転校先でチビリーという愛称がつき、散々いじめられることだろう。
串刺「か、母さんに迷惑かけるのは嫌だからさ、ホラ、タクシーで行くよ、タクシー」
串母「あら、そう?・・・そうね、じゃあ私も行くわ。保護者だし」
串刺「わ、分かってくれた?よし、よし・・・・」
やったぜ!俺はチビリーをギリギリの所で回避する事ができた!
どうやら母さんも俺がいじめられる事を想像できたらしいな。流石だ。
串刺「じゃあ早く行こう。俺はコーディネートに時間をかける男だからな」
串母「アンタって面白いわねー。じゃあ行きましょうか」
俺は母さんの方が面白いと思うんだが・・・。
その後タクシーに乗り母さんといつもと変わらない会話をして、
一時間たったかたたないかの内に、これから俺がすんばらしくコーディネートする林檎アパートの前に無事到着した。
串刺「おし、何号室?」
串母「427(しにな)号室よ」
串刺「・・・・・・」
串母「うーっそ。105号室よ」
串刺「嘘も対外にしてくれ・・・そもそもココ2階建てなんだから427号室なんてあるわけないだろ」
串母「まぁまぁ。ハイこれ鍵。ちょっと中見たら学校の方に行くからね」
串刺「・・・何で?転校は明日だろ?」
串母「何言ってんの、どのクラスに入るのかとか、登校時間とか色々聞かなきゃなんないでしょ」
串刺「・・・そういやそうだったか。平和ボケしてた・・・と、ココだな105号室」
俺は鍵を差し込み鍵を開けてから、ゆっくりとドアノブを回す。
扉を開けるとダンボールが山積みになって今にもコチラに倒れそうだったので、俺は速ドアを閉めた。
串母「あら、もういいの?」
串刺「ああ、後にする・・・」
母さんは大きな爆弾を仕掛けていたようだ。
もしあのままダンボールが倒れてきていたら、俺はダンボールマンの愛称でいじめられていたハズだ。危ない危ない。
よく今まで俺はこの強敵と一緒に暮らしていたなと感心する。よく頑張った、俺!
串母「さてと、ココが遊笑楽宴よー」
串刺「って早いなオイ!隣かよ!」
串母「早くていいじゃない。さて入るわよー」
ここが遊笑楽宴か・・・思っていたより警備が甘い。というより門が開けっぱなしで誰一人として見張りがいない!
大丈夫なのか、ココ?・・・そんな事を考えていたら柱に正面衝突してしまった。痛い。母さんは見向きもせずに歩き続ける。
さすがは俺のライバルだ・・・強い、強すぎるぜ・・・。
串母「ここが校長室ね・・・ん、何々ー?『生徒立ち入り厳禁』ですって?」
串刺「何だそりゃ?」
串母「よく分からないから無視しましょう」
串刺「いやいやそれはヤバイって!」
串母「えー、何で?」
串刺「そういうのは守らないと契約取り消しになると思うよ母さん」
串母「それは嫌ね。じゃあ私一人で行って来るわ」
串刺「無事を祈る」
串母「うふふ、期待してて」
串刺「・・・何を?」
母さんは返事をせずに校長室へ入っていった。正直俺は少し凹んだ。
十秒程した頃母さんが戻ってきた。何故か満面の笑みで。
串刺「母さん、洗脳されたか?」
串母「悩殺されたのよ」
串刺「・・・・・で、何だって?」
串母「このプリントに全部書いてあるから。じゃあ私は帰るわね」
串刺「え、もう行く・・・」
母さんはいつのまにか消えていた。これが不戦勝というやつだろうか。
取りあえず母さんに勝ったので俺は帰宅する事にした。
続く
第二節 友達いっぱい へ
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