遊笑楽宴
2年B組物語



問題一
新たな転校生


第二節 友達いっぱい



俺はあの日帰ってからダンボールと格闘し勝利した。一通りコーディネートをし終わった後、いつの間にか眠りについていたようだ。
久しぶりに心地よく起きたのだが・・・そういえば時計セットしていなかったか。というよりその前にプリントを見ていなかったんだっけか。
とまぁそんなこんなで俺は転校そうそう遅刻をしでかしてしまったのだった。

急いで学校に行き、そこにいた先生に聞いてみると、快く案内してくれた。
俺が転校するのは2年B組で、担任は岩下刈男というらしいが・・・。
どうもヘナチョコな名前なので、俺は会っても無いのに不安になってしまった。そしてその不安はズバリ的中した。

串刺「・・・・・」

2年B組の教室の前に来た。先生はヒョロヒョロで、ボソボソと何か呪文のようなものを唱えている。
俺は案内してくれた先生と現実逃避をしそうになりながらもお別れをし、
中の様子を再確認してみたが、どうみても唱えている。そして俺には気づいてくれそうもない。

しばらく他の生徒を見ていたら、眼鏡をかけた新しいヘアスタイルの奴が気づいてくれたようで、先生を呼んで俺の方を指差した。
すると先生も気づいたようで、ドアを開けて俺を見つめた後、口を開いた。

岩下「君が・・・串刺元気太郎君ですね・・・?」
串刺「あ、はい。そうです」
岩下「コチラへ・・・」

俺は言われるがままに教卓の前へ。
皆が俺の事を見ている!俺って人気者!?・・・まぁ当たり前だが。


岩下「自己紹介をお願いします」

自己紹介か・・・明るくて、元気なのが好印象だよな!
となると・・・よし!これだ!

串刺「俺、串刺元気太郎!皆、宜しくなっ!!」

俺はグッと親指を立てる。すると皆の冷たい眼差しが俺に一斉にふりかかる。
ああ、やっちまった・・・俺、完璧イジメの対象になったな、と実感した瞬間だった。

岩下「席は窓側の一番後ろで・・・」

窓側の一番後ろ――
隣にいるのは何だか不気味な女で、いかにもイジメてますというオーラを放っている。
わぁ、最悪な席だぁ☆と思いながらも指定された席につく。するとその隣の女が口を開いた。ああ、イジメられるぅ・・・!!

 ?「私、胡桃割 呪 (くるみわり のろい)、呼び捨てで良いわ。仲良くしましょ、串刺」
串刺「へ?あ、ああ、よしく」

奴の発言があまりにも意外だったので俺は思わず噛んでしまった。ちくしょう!恥ずかしい!
女も笑っている・・・ええと胡桃割か、どうやらいい奴のようだ。人は見かけによらないというのはこの事だな。

胡桃「今、一応数学の授業なんだけど・・・うちの岩下かなり内気で授業になんなくてね」
串刺「よくあんなんで先生やってるな・・・」
胡桃「まぁ学費無用だから何にも言えないけどね」

すると俺の斜め前のつんつんヘアーな奴がこっちを向いて話しかけてきた。

 ?「俺、走良 例流(ぱしら れる)。君って天然?」
串刺「む、失礼な!我輩はいつも真面目であるぞ!」
胡桃「それ説得力無いわよ」
串刺「う・・・ワンワン!バウバウ!」
走良「ははっ。君っておもしろいね!」
串刺「俺もそう思う!」
胡桃「バカ言ってんじゃないわよ・・・・そろそろ終わるわね」

胡桃割の発言と同時にチャイムが鳴る。コイツ強いな・・・今日から俺のライバルに勝手に認定だ!
他の奴らはトイレにいったり喋りあったり殴りあったり・・・それはないか。

俺の前が眼鏡をかけた新しいヘアスタイルの奴の席のようなので、さっきのお礼を言うべく声をかけた。

串刺「あー、その。俺の前のあんた」
 ?「俺のことか?」
串刺「ああ。その、さっきはありがとな、気づいてくれて」
 ?「岩下が気づかなかったからな・・・。俺は空飛 円盤(そらとび えんぱん)だ」
串刺「円盤か。よろしくな!」
空飛「ああ」

俺が円盤と握手した所に、2人の男組みが割り込んできた。
片方は黄色のトゲトゲ頭で、いかにもやんちゃボウズって感じだ。
一方もう片方は赤毛のつんつんヘアーで目つきが悪く、暴走族のリーダーのようなオーラを放っている。危険だ。

俺の第六感が危険信号を発している最中(さなか。決してもなかと読むなよ!)、リーダーっぽい奴が口を開いた。

 ?「俺、透須戸 焼男(とおすと やくお)。その・・・よろしくな」
 ?「俺は炭酸 飲料!よろしくッス!」
串刺「あ、ああ、よけぇ」

ああ、しまったまた噛んだ!しかもダブルで!これは赤い奴のせいだ!焼男が照れながら言うからだ!
そういえば俺、昔から緊張した時とかはよく噛んでたっけ・・・って過去を振り返っている場合じゃない。
ああ、円盤まで笑いやがって、チクショー。だんだん噛み所が増えてきてるし、今度は『し』か!?よるすぃけぇか!?

透須「くははっ、緊張がほぐれたよ、ありがとな。お前とは仲良くできそうだ」
炭酸「お、俺とも仲良くしてほしいッス!」
空飛「良かったな串刺、転校そうそう友達がいっぱいじゃないか」
串刺「たりめぇだ、俺は人気者だからな!」

そんな話をしていると、何やら皆お弁当箱をもって何処かにいっている。
・・・まさか今の授業は4時間目だったのだろうか。俺は知らずの内にかなりの損をしていたようだ。

空飛「ああ、そうか串刺は知らないのか。今日は金曜日だから弁当制なんだ」
串刺「は!?・・・金曜日だから?」
炭酸「月・火・水・土が教室での給食制、木・金・がどこでもありありの弁当制なんッス」
串刺「俺、弁当なんて持ってねーよ・・・」
透須「欲しいんだったら俺等の所来たらわけてやるよ、屋上で食ってるからさ」
炭酸「待ってるッスー!」

そういうと炭酸と焼男は弁当を持って何処かに行ってしまった。
教室を見渡すと俺と円盤、それともう一人灰色髪の女がいる。
聞かれては失礼だと思ったのでひそひそ声で聞いてみることにした。

串刺「(なぁ、あいつ誰だ?)」
空飛「(ああ、あいつは一升 藤美(いっしょう ふじみ)。寂(さび)のいとこだよ)」
串刺「・・・寂?」
空飛「ああ。お前と友達になりたがってたぞ。
    今は・・・要(よう)と裏庭で弁当を食べてるんじゃないか?」

串刺「裏庭?」
空飛「ここの窓から行ける・・・安心しろ、ここは一階だ」
串刺「なっ!いくら俺でもそれぐらい分かるぞ!」
空飛「っはは、スマンスマン。この学園には悪い奴等もいるから、気をつけてな」
串刺「おう、お前は藤美とラヴラヴな会話をしてろよ!」
空飛「・・・は!?お前何言って――」

俺は決めゼリフを言い捨てて、裏庭に居るという寂と要という奴の元へ向かった。
ふ、円盤の奴、照れちゃって。俺には全てお見通しさ!

寂と要・・・名前からして影が薄そうだが・・・まぁ空想はあまりしない方がいいな、今までも外れてきたし。
両方共男だよな?・・・あ、あれか?

?「あ、串刺さん!?」
?「・・・・・」

あ、あああ、灰色の長い髪・・・あれが寂か、女だな・・・。ちょっと可愛いかも・・・。
隣の奴はボンボン付き帽子を被っていて、見るからに影が薄い。

串刺「お、お邪魔でしたか・・・」
 寂「えっ!?あいや、わ、私男です!」
串刺「うぇっ!?ま、マジで!?」

・・・よし!今度は噛まなかったぜ!流石は俺!進歩してるって感じ!?
いや問題はそっちじゃなくて、寂が男!?少し惚れかけた俺の心を返せー!!

串刺「す、すいません、誤解してました一瞬だけ!」
 寂「あ、いえいいんです、慣れてますから。それよりも・・・」

寂は隣に置いてあったミニカツサンドを俺に差し出した。
俺はそれを受け取り、聞いてみた。

串刺「俺に・・・?」
 寂「はい。さっき余ってたお金で買ってきたんですが・・・そんなのですいません」
串刺「いや、いいよ。ってかありがとう!寂!」
 寂「あ、倍増(ばいぞ)でいいです。ここで食べていきませんか?」
串刺「あ、ごめん・・・焼男に誘われてるんだ。また今度な!」
 寂「あ、そうですか。こちらこそごめんなさい急に」
 要「・・・・僕って、影薄いかな・・・?」
串刺「う、るぅぁ!?そそそそんなことないれふよ」

や、やっべー!要の存在マジで忘れてた!しかも噛んだ!こ、こいつ強敵だ・・・!
伊達にボンボン帽子じゃねぇな!

 寂「よ、要君!?失礼だよ!」
串刺「あ、いいよいいよ。忘れてた俺が悪いんだし」
 要「・・・忘れてたんだね・・・」
串刺「あ・・・」
 寂「ご、ごめんなさい。後できつく言っておきますから!」
串刺「あ、いやいいよ。悪気はないんだろうし・・・」
 寂「あの、串刺さん」
串刺「ん?」
 寂「ありがとうございました、来てくれて。・・・嬉しかったです」
串刺「・・・!?お、教えてくれたのは円盤だからな。お礼なら円盤に、い、言ってく・・・れ!」

や、やべぇ、あやうく噛みそうになったぞ・・・!ギリギリかわしたが。
俺は恥ずかしかったのでその場を走り去り、屋上へ向かう事にした。

・・・そういえば給食の時間ってどれぐらいまであるんだろうか?とそんな事を考えていたら屋上のフェンスに激突した。
痛い!い・た・す・ぎ・る!おそらく俺の顔にはフェンスの跡があるに違いない。ああ、何てカッコワルイ・・・。
どうやらそれを目撃されたらしく、透須戸と炭酸の笑い声がどこからともなく聞こえる。

透須「ぶっ、うあはははは!ひぃっ、ひぃ・・・!!お前、超おもしれーぜ!」
炭酸「ぷくくくく・・・くふふ」
串刺「っつ―、いってー・・・」

そう言って俺が手を顔からはずすとさらなる笑いが。
やはり跡がついていたらしい。ああ俺ってばバカ・・・!

透須「くっ、うぁはははは!!跡までついてやがるし!あははっうぁはっ!」
炭酸「うーあっはははは!最高ッス元気太郎さん!あははは!」
串刺「他人事だと思ってぇ・・・っつ―!」
透須「ひぃ、ひぃ・・・・あー、ごめんな串刺。つい」
炭酸「ぅあー、すいませんでしたッス!でも面白かったんで・・・大丈夫ッスか?」
串刺「お、おぅ・・・何とかな・・・」
炭酸「あれ、それはミニカツサンドじゃないッスか」
透須「!?マジかよ!どうしたんだそれ!?」
串刺「え?あ、ああ、倍増にもらったんだ」
透須「倍増か・・・あ、そだ、どれ欲しい?あんま残ってねぇけど」
炭酸「あ、ごめんなさい。あんまり遅かったんで俺全部食べちまったッス」
串刺「あ、いいよ炭酸。俺が悪いんだし。で、えーと・・・じゃあ唐揚げ!」
透須「おお、唐揚げか。美味いぜ、なんてったって俺の妹が作った奴だからな」
串刺「妹?」
炭酸「兄貴には砂夢(じゃむ)さんっていう列記とした妹さんがいるんスよ」
串刺「列記とした・・・どれどれ。!う、美味い!」
透須「だろう?」
串刺「このとろけるような舌触り、ほのかに香る肉の匂い!これぞ、俺の求めていた味だ・・・!」
炭酸「・・・元気太郎さん?」
串刺「や、やったぞ!俺はついに成し遂げたんだ・・・!もう、悔いなど無い・・・これで、お前の元に・・・」
透須「ちょ、おい何処行くんだ!?」
炭酸「わ、わわストップストップ!!」
串刺「ハハハ・・・唐揚げ〜、逃げるなよぉ〜」
透須「元気太郎!目ぇ覚ませ!」
串刺「ハッ!」

な、何だ?今、記憶がどっかに・・・。

炭酸「だ、大丈夫ッスか?」
串刺「あ、ああ・・・何か、くらくらするな・・・」
透須「お、おい、ヤバいんじゃねぇか?」
串刺「ああいや、俺今日朝飯食ってないからさ、多分そのせいだよ。ミニカツサンドさえ食べれば・・・」

その時チャイムが鳴った。俺は絶望した。
透須戸と炭酸は食べることを薦めてくれたが、俺は絶望で食べることが出来なかった。
しかし教室が近づくにつれ精神も正常に戻り、もちろん空腹も蘇ってきた。
やっぱり食っときゃ良かった・・・と思いながら俺は教室に帰った。
教室ではまた見栄えの無い、岩下による帰りの会なる催(もよお)しが始まった。

空飛「おい串刺、お前のせいで弁当の味が分からなくなったじゃないか」
串刺「ラヴラヴな話をしててか?」
空飛「・・・!・・・もういい。お前と話してると時間の無駄だ」
串刺「もう照れちゃって可愛いなぁ円盤は」
走良「(串刺し君、そこらへんでやめて置いた方がいいよ、マジギレすると怖いからね)」
胡桃「(そうよ、このクラスでマジギレ大会を行なったら、私を抜いてぶっちぎりの一位よ?)」
串刺「(え、円盤ってそんなに怖いの?)」
胡桃「(ええ、こないだなんか焼男と炊子の戦いにキレて焼け野原になったかのように静まり返っちゃったんだから)」
串刺「・・・炊子?それに戦いって・・・」
走良「炊飯器さんはあそこにいる山吹色の髪をした人で、ご飯好きなのでパン好きな透須戸さんとよくケンカするんだよ」
胡桃「明日はパンだご飯だって・・・バカバカしいわ」

俺は炊子を見てみた。強そうないでたちで、焼男と戦うと言うのも嘘ではないというのがよく分かる。
しかし円盤がそんな二人のケンカを止めて、そのうえ静まり返らせられるなんて・・・どうやら俺は円盤を甘く見ていたようだ。
にしても焼男はパン好きだったのか・・・通りでさっきミニカツサンドにくいついた訳だ。
とまぁそんな事を考えていたら帰りの会なる催しが終わったようだ。

炭酸「きりーぃつ」

炭酸の掛け声で皆が立ち上がる。なんて強い指揮官なんだ!!・・・とまぁ冗談はおいといて、
どうやらあいつがこのクラスの代表らしい。意外だな・・・。

炭酸「れーい!」

そしてまた炭酸の掛け声で『さよぉなりー』やら『さよおならー』やら『こんにちはー』やらが・・・それはないか。
皆友達と帰っているが、俺はどうしようか。

*誰と帰りますか?*
円盤
藤美  ピッ
焼男
胡桃割


よし!藤美に決定だ!

串刺「なぁ藤美ー、一緒に帰らねー?」
一升「え・・・」
空飛「オイコラ」
串刺「あ、先客がいたか」
空飛「てめぇ潰されたいのかそうかならばやってやろうじゃないか」
串刺「ごめんなさいごめんなさい本気で!!本気でごめんなさいもう言いません円盤様!」
一升「・・・・・」
空飛「・・・一升、帰っていいんだぞ」
一升「え、あ・・・ハイ」
串刺「あ、もしかしてちょっと一緒に帰りたいなぁとか思っちゃったりしちゃったり―」
空飛「暴力は嫌いなんだが――」
串刺「思ってませんねハイ、どうぞお帰りくださいましー!!!」
一升「あ、じゃあその・・・さようなら」
串刺「また明日ライオソのごきげんようの提供で!」

そう言うと藤美はそそくさと帰っていった。俺は危うく転校初日に『遅刻して殺される』という称号を得る所だったが、
なんとか『遅刻して殺されそうになる』の称号で済んだ。走良の言ったとおりだ、マジで怖い。
明日からは真面目に生きよう、マジで。あ、ダジャレじゃないよ?
そんな所で今回はお開き!まーたあーしたー!



続く

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